転勤で東京からアメリカ・シアトルにきて、1年ちょっと。今年はとにかくコロナウィルスの影響で生活が一変しましたし、秋冬は雨の日が続くことも多いですが、シアトルでの生活自体はとても気に入っています。
海外で働くこと自体は今回が初めてではないのですが、国が変わると勝手が全然違うのを改めて実感。という訳で、ここ1年強コロナ期間含めアメリカで働いて特に心に残ったこと、また自分自身に起こった変化についてメモしておきます。
※あくまで一個人の体験・感想であることは初めに言っておきます。「アメリカ・シアトルで働く」と一言で言っても、日本で色々な働き方があるのと同じで、人によって全然違います。色々な会社がありますし、同じ会社の中でも部署が違うと全然カルチャーが違ったりします。
※ちなみにトップ画像は、数年前のプライムデーに衝動買いしたドローンで撮影。
周囲の当たり前の変化:「17時=遅い」
コロナ前、まだ会社に出勤していた頃。まず一番衝撃だったのがこれ。
多くの人が朝9時台に出勤して、16〜17時くらいに退社します。私の会社がフレックスタイム制なこともあり、日によっては14時くらいに「用事があるので」と言って会社を出る人も。
18時を過ぎて会社に残っていると、ものすごい孤独。シアトルに来て間もない頃、私が日本のノリでひとり会社に居残って仕事をしていると、19時にはオフィスフロアの電気が消されることが分かりました。
17時くらいにオフィスに残っていると上司に「早く帰りなよー、じゃあまた明日!」などと声をかけられて、最初は正直こう思いました。
もちろん、それは事実ではありません。むしろアメリカの同僚は私が思っていた以上にハードワーカーで昇進に貪欲な人も多いです。私が所属するチームはヨーロッパにもインドにも日本にもチームメイトがいるため、日によっては朝早く・夜遅くのミーティング(ビデオ会議)に参加する必要も出ます。
ただ、それでも多くの場合16時から17時に仕事を一旦切り上げるのです。コロナが始まる前は、シアトルの車渋滞の激しさが早く帰宅する一因でしたが、コロナが始まって毎日テレワークになってからも、皆の勤務リズムは大体同じ。16時以降はチャットの反応が一気に途絶えます。17時以降は遅いので、緊急でもない限りチームメイトにチャットを飛ばすこともありません。
環境が変わると、当たり前が変わる。
仕事を早く切り上げて、家族や大事な人夕食を一緒に食べるのが当たり前。パーソナルな時間は尊重されるのが当たり前。
日本にいた頃も大体19時くらいには切り上げて、比較的良いワークライフバランスを取れていると思っていたのですが、更に勤務時間を短くすることにモチベーションが湧くようになりました。
生産性を上げることにもっと真剣になった
私は現在「平均して1日8時間以上働かないようにする(平均して残業時間ゼロ)」というルールを自分に課しています。この目標を達成するうえで、課題になったのが下記3つ。
- 勤務時間を短くしても、仕事量は変わらない
- 日本チームとのミーティングが多く、夕方・夜に働きがち
- 一時的に忙しくなるタイミングがどうしても存在する
まず「1.勤務時間を短くしても、仕事量は変わらない」に関しては、生産性と集中力を大幅に上げる必要がありました。生産性・作業効率化・タスク管理に関する本を読み漁り、できることから実践していくことで、地道に徐々に生産性を上げて行きました。
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また、ただ生産性を上げるだけでは限界があったので、「やらないこと」を決めることも役立ちました。たとえば重要度・緊急度が両方低いものや、大したインパクトがないのにやたら時間がかかるタスクに関しては、上司や同僚の人とも相談しつつ、勇気を持って「やらない」もしくは「質を下げる」という決断をすることも大事だと思います。
「2.日本チームとのミーティングが多く、夕方・夜に働きがち」に関しては、夜にミーティングを入れる日を週1〜2日に限定し、その日は仕事の開始自体を遅らせるようにしました。
最も難しいのが「3.一時的に忙しくなるタイミングがどうしても存在する」だったのですが、これに関しては労働時間が長くなってしまった日・いわゆる残業がでた後(可能であれば次の日)に超過分を減らすことで帳尻をあわせることにしました。
たとえば、「火曜日に10時間働いてしまったら、水曜日を6時間にする」みたいな感じです。たくさん働いた日はどうしても消耗が激しいですし、回復するの本当に大事。これができるのはフレックスタイム制の最大の長所だと思います。1週間どうしても忙しい日が続いたら、その次の週のどこかで休みを取ることにしました。
やってみて、思ったこと。
思い返せば、「周囲の人よりも長く働く=頑張っている」という発想が無意識にでも存在していたのかもしれません。こちらでは逆に仕事が遅いという評価に繋がりかねないので、アメリカに来てから今まで以上にスピードを意識しています。
日本でもコロナウィルスの影響でテレワークや働き方の幅が一気に広がり、人との距離が離れた今が、ある意味集中力と生産性を高め、仕事のスピードを上げるチャンスなのではと思います。
ここ4年、コロナ前から度々在宅・リモートでの仕事をしてきましたが「テレワーク=生産性が下がる」は決して正しくないと思います。もちろん、職種によってオフィスにいないと不便な場合もありますし、対面のコミュニケーションの良さももちろんありますが、ひとりで集中して行う作業に関しては、今まで以上に捗らせることは可能なはずです。
ごはんを作る元気が残る
日本で働いていた頃、正直自炊をした記憶がほとんどありません。外で晩ごはんを食べた後ぐったり疲れて帰宅、ちゃんと消化もしないままそのまま横になり、更には化粧をしたままで寝てしまうこともありました。
私はHSPなので(当時は概念を知りませんでしたが)、今思えば長時間労働や満員電車などの刺激に、人一倍消耗していたのかもしれません。
アメリカに来てからも「環境の変化(引っ越し・コロナ)」という意味では結局消耗していたのですが、それでも仕事をする時間を短くすることで、休息や家事に使える時間を長く確保できるようになりました。
仕事を切り上げても晩ごはんを作る元気が残っていて、早めに晩ごはんを食べられること。また、食べる量や栄養面を自分でコントロールできるようになったこと。ウィズコロナ生活になってからは、昼ごはんもさくっと作るようになり、体調面(特に胃腸周り)で徐々に良い影響が出始めています。
食生活の違いで思いきり太ってしまったり、体調を崩してしまうことを心配していたので、ある意味自炊生活に切り替えざるを得ない状況で良かったのかもしれません。
とはいえ、料理自体に疲れても本末転倒なので、仕事などに疲れた日は積極的に外食やUber Eatsなどのフードデリバリーを活用しています。
大戸屋が恋しいと思うこともよくあります。
緑や自然に目が向くようになった
シアトルは都市ですが、すぐ近くには海が見え、緑に囲まれた公園もたくさんあります。通勤や散歩で街を歩いているだけでも、空や海、緑を眺められる機会が多いのが好きです。特に晴れの日には、はっとするほど綺麗な景色が広がり、気分が明るくなります。
コロナ以前の生活で言うと、オフィスの中にも植物がデスク周りに置かれてあり、ファーマーズマーケットなどで花束を買っている人もよく見かけます。植物がメンタルヘルス改善に繋がる話は有名ですし、オフィス緑化に力を入れている企業さんも多くいますよね。
家に花や植物を置くという発想は、これまで私の中にはあまりなかったのですが、いざ置いてみるとお部屋の中も華やかになりますし、癒やされます。私の場合ズボラなので、ほとんどがドライフラワーやフェイクグリーンです。フェイクグリーンでもメンタルヘルスに多少は良い影響があるので、仲間のズボラさんにおすすめ。
「何のために働いているんだっけ」を自分に問う
こちらに来てよく感じるようになったのは「働く時間は、人生・生活のあくまで一部」だということ。仕事量自体は日本にいた頃とほとんど変わっていないのですが、生産性を上げ働く時間を短くできたことで、気持ちに余裕が生まれはじめました。
元々「時間を無駄にしたくない」と考えるタイプで、今もその部分は大して変わっていません。変わったのは、以前よりも切羽詰まっている感じが減ったというか、例えば「散歩しながら目の前の景色を味わう」といった一息付く瞬間や、その時に感じる幸せを大事にできるようになったように感じます。働く時間を短くすることが、QOLの向上にここまで関わるとは思っていませんでした。
ただ、それと同時に、振り返ってみて感じたことがあります。
もちろん「周囲の雰囲気で早く切り上げづらい」「Zoomで飲み会が開催されて結局休めない」なんて日本ならではなこともあるかと思いますが、自分に合う環境を自分で選ぶこともできたのかなと。ウィズコロナ時代、在宅勤務もフレックス制も珍しくなくなり、形だけの制度ではなくなりました。
たとえ働く時間を短くすることがどうしても難しかったとしても、日々「Pause(止まる)」瞬間を最低数分だけでも作り、窓の外のちょっとした自然を楽しむくらいはできていたのではないかなと思います。
目まぐるしい日々を送っている時こそ、深呼吸して、景色を見回して、「私は何のために働いているんだっけ」と問いかけてみても良いかもしれませんね。