【エッセイ】正直微妙だった焼肉屋の逆転

「美味しいお店」とは別に、「心に残るお店」というものがあるようです。

愛想は良いけど注文が来ない

家の近くを友人と散歩中、たまたま目に止まったのは焼肉屋さん。

店内が賑わっていた訳ではないけれど、2人ともお肉な気分だったので入ることにしました。

とても愛想の良い店主さんと店員さん。

飲み物、スターターとして塩キャベツとポテトサラダ、そしてお肉やキムチなどをいくつか注文。

すると飲み物とお肉類は割とすぐに来たものの、スターターの塩キャベツとポテトサラダがいつまで経っても来ません。

更に、店員さんがお肉を焼いてくれるシステムだったのですが、網が良くないのかそのくらいの焦げ感がスタンダードなのか、お肉が結構焦げてしまいました。

仕方なく焦げた部分を削りながら食べることに。

お肉自体は良いお肉を使っているのか美味しかったのですが、2人とも焦げたお肉が苦手だったのもあって少しテンションが下がりました。

食べながら飲み物を追加で注文するも、また来ない。

気付くと友人の顔も不満気。

私たちの会話も、いつの間にかお店の話題ばかりに。

せっかくの楽しい食事の時間がお店への不満で一杯になってはもったいない。

そう感じた私たちは早く店を出たいと思うようになりました。

店主さんのリカバリー

とりあえずスターターのポテトサラダと塩キャベツが来ないので、通りがかった店主さんらしき人に聞いてみました。

すると店主さんが速攻で厨房をチェック。既に作られていたものが放置されていたのか、すぐに出してくれました。

更に「すぐにご用意できず申し訳ありません」と丁寧に言葉を添える店主さん。

不満に思っていても、相手の誠意は伝わるもの。

それまで私たちの頭の中を渦巻いていたネガティブな印象が徐々に薄れていき、私たちの会話も普段通りに戻っていきました。

そして食べ終わった時、途中で頼んだ飲み物がまだ来ていないことに気付きました。

「もう良いや」と思い、通りがかった店員さんに「飲み物が来なかったのでキャンセルお願いできますか」と伝えたところ。

ものすごい勢いで持ってきたうえに「本当に申し訳ありません。こちらはサービスさせていただきます。」と一言。

勢いに負け、せっかく用意してもらったので好意に甘えて飲み物を受け取ったところ、更に続けて店主さんが「もう召し上がるものがなくなっていると思うので、こちら良かったら召し上がってください」とデザートまで。

このデザートがとても美味しかった。

お会計の時に、再び店主さん。

「この度は色々とすみませんでした。今度はもっと喜んでいただけるように精進しますので、また良かったらいらしていただけると嬉しいです。」と丁寧な挨拶のうえ、お店の外まで見送りをしてくれました。

私たちのお店に対する不満はいつの間にか消え、お店を出た時には「逆に色々やってくれてなんだか申し訳ない」「この人たち良い人だな、今度来た時はもうちょっとゆっくり楽しんでみよう」という気持ちが芽生え始めていました。

「真摯さ」は伝わる

この店主さん・店員さんを通して感じたことは、「真摯さ」は伝わるものなんだということ。

もちろん、元々大きなミスをしないことの方が本質的だし、飲食店にとって「無料でサービスをする」という手段は、奥の手というかしなくて良いと思います。

ただ、人間誰でもミスをすることはあるし、人に迷惑をかけることだってある。

普段のパフォーマンスを出せないことだってある。

相手に気に入ってもらえないことだってある。

そんな時に、どんなリカバリーができるか

相手の信頼や笑顔を取り戻すために、相手の期待値を超えるために、自分は何をすべきか

最初は正直微妙だった焼肉屋さん。

でも店主さん・店員さんの一連の対応には、リカバリーしようという真摯さが詰まっていたように思います。

次行く時は、自分で焼き加減を調整しようかな。

日々の学びや気付きをつぶやいています