ここ最近、特によく聞くようになった「HSP」という言葉。テレビなどで芸能人の方が話題にされるまでになってきていますね。
このブログでは、「自分もHSPかも」という方、もしくは「HSPって何?」などHSPに興味を持っている方を対象に、HSPの基本的な概念とよくある誤解、無料で誰でも簡単に診断テスト方法を受ける方法などについてまとめました。
なお、下記参照元・引用箇所に関してはすべて、HSP研究の第一人者であるエレイン・アーロン博士の著書「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術」です。
また私自身HSPで、文字通りこの本に救われたひとりです。より多くの方にこの特性の存在や良いところを知ってもらえますように。
HSP:Highly Sensitive Personとは
HSPは「Highly Sensitive Person(とても敏感な人・感受性がとても高い人)」の略称です。
全人口の15~20%に見られる「正常な特性」であり、病気ではありません。
「痛み、カフェイン、空腹に敏感で、豊かな内面世界を持ち、良心的である」など共通する要因が見られます。
「敏感さ」ゆえ、他の人たちよりも微妙なことによく気がつく一方で、他の人よりも容易に物事に圧倒されてしまいます。
大半が遺伝によるもので、人間以外の動物においても同様の割合で見られる性質です。そう言われてみると、敏感なワンちゃんや猫ちゃんっていますよね。
同じ刺激、同じ状況のもとでも、神経系の興奮の度合いは人によって大きく異なる。 こうした違いは大部分が遺伝によるもので、ごく現実的で正常なことである。実際これは、ネズミ、猫、犬、馬、猿、人間、すべての高等動物にみられる特質だ。それぞれの種において、非常に敏感な性質をもつ個体の割合は、およそ一五パーセントから二〇パーセントといわれている。
エレイン・アーロン著「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術 (フェニックスシリーズ)」
DOES:「敏感さ」がもたらすHSP4つの特性
アーロン博士は、HSPの気質をうまくとらえた下記4つの特徴があると言い「DOES」と呼んでいます。「自分もHSPかも」と思っている方、心当たりがないでしょうか。
D: 処理の深さ(Depth of Processing)
ひとつめが、「行動する前に観察し考える」「人よりも深く物事を処理する」という処理能力の深さ。
たとえば子どもの頃、学校の先生が質問を投げかけたときに「しばらく考えると良いアイデアが思いついた(が、タイミングを逃したので言わなかった)」なんて経験ありませんか?
HSPは、あらゆることを過去の似たような経験と関連づけたり比較したりして、深いレベルで処理するが、それは意識的におこなわれる場合もあれば無意識的におこなわれる場合もある。無意識に何かしらの結論をくだした場合、それは直感と呼ばれ、HSPは(絶対に正しいわけではないが)この直感力に優れていることが多い。
エレイン・アーロン著「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術 (フェニックスシリーズ)」
O: 刺激に敏感(Overstimulation)
ふたつめの特徴が、刺激に敏感で、強い刺激に対してはかなり消耗してしまうこと。飲み会やパーティー、満員電車、騒音など、(社会的刺激含む)刺激が過剰になるとストレスに感じてしまうこと。
些細なことにもすぐ気づき、しかもそれが複雑な状況で(覚えることが多い)、刺激が強く(騒がしい、乱雑など)、長時間(二時間の通勤)つづくとしたら、当然のように、処理する情報が多すぎて疲れてしまうだろう。一方で、HSPほど周囲に敏感でない人たちは、それほどすぐに疲れない。
エレイン・アーロン著「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術 (フェニックスシリーズ)」
DOESのなかで唯一ネガティブな特徴で、刺激に消耗した場合には人よりも長い休息を必要とします。逆に言えば、ちゃんと休息すれば大丈夫。
E: 情緒的反応(Emotional Reactivity)と共感性(Empathy)
Eは「情緒的反応」と「共感性」のふたつの意味を示しているようです。HSPは、良くも悪くも人より反応しやすく、他人の意図や感情を汲むのが得意な傾向にあります。
別の言い方をすれば、HSPは他人の感情を理解するだけでなく、場合によっては、ある程度相手と同じように感じているということだ。
これは敏感な人にはよくあることで、誰かの悲しい顔を見ると、HSPのミラーニューロンは、非HSPのそれよりも活性化する傾向にある。愛する人の不幸せそうな写真を見ると、HSPは、共感性に関する領域以外にも、どうにかしたい、行動を起こしたいといった感覚を司る領域を活性化させる(そしておそらく混乱を避けるために、こうした強い共感性を抑えるすべを学んでいく)。いずれの強い感情を示す写真でも、共感を示す脳の領域をより活性化させたのは、非HSPではなくHSPのほうで、なかでも他人よりも近しい人、不幸せな表情よりも幸せな表情により強く反応を示している。
エレイン・アーロン著「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術 (フェニックスシリーズ)」
たとえば災害のニュースなど、悲しいニュースに心を痛めることは誰にでもあるかもしれませんが、その悲しみを自分ごとのように感じてしまうことってありませんか?
また、子どもの頃、人一倍テストの結果に一喜一憂していませんでしたか?学校でテストが行われるのは生徒にやる気を出させるためで、HSPはテストの結果にとりわけ影響されることも分かっているようです。
敏感な人が、やる気を引き起こす強い感情を持たずに、物事を複雑に処理するのは不可能なように思える。だが覚えておいてほしいのは、HSPの反応が人より大きいのは、好奇心や(他の人が知らない近道を使うことによる)成功への期待、何かに対するいい意味での欲望、満足、喜び、達成感などの肯定的な感情ゆえである、ということだ。
エレイン・アーロン著「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術 (フェニックスシリーズ)」
S: 些細なことにも気づく(Sensing the Subtle・Sensitive)
4つめの特徴が、他の人が見逃すような周囲の些細なことにも気付くこと。目鼻耳など特定の器官が優れているというわけではなく、感覚情報を慎重に処理している可能性があるのだとか。HSPの最大の特性とも言われています。
人生におけるシンプルな喜びを味わうことから、相手の気分や信頼性など、彼らが無自覚に発する言葉によらないサインを読み解いてこちらの対応を決めることまで、些細なことに気がつく気質は、無限の可能性を秘めている。もちろん疲れていれば、些細なことどころかあらゆることが目に入らなくなって、休むことしか考えられなくなってしまうこともある。
エレイン・アーロン著「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術 (フェニックスシリーズ)」
HSPに関するよくある誤解
「HSP=内気」ではないし「HSPならみんなこう」ではない
アーロン博士によると、HSPの30%は外交的なのだそうです。私自身も、外交的な側面を持つHSPなので、「内気」「恥ずかしがり屋」という言葉はあまりしっくり来ません。
敏感さも人それぞれ。共通することは存在するにしても、時代によっても異なるし、過去や子どもの頃がどうだったかによっても人となりや傾向が変わってきます。
HSP・敏感であることは悪いことではない
日本語で「敏感」と言うとなんだかネガティブなニュアンスに聞こえてしまうこともあると思います。特に仕事の場においては「ストレスに動じない」ことが社会人として必須であるような風潮さえ感じます。実際、そういう風潮とストレスに耐えきれず、会社を辞めてしまうHSPもいるのではないでしょうか。
「不幸な幼少期を過ごしたHSPにうつ傾向が多く見られる」など、こころの病気との関わりもないとは言えません。
ただ、「よく気付く」「人の機微を読み取れる」ことはむしろ仕事でもとても役に立つ才能。ストレスや消耗しやすさへの対処をきちんと行っていれば、仕事面でも人間関係でも、むしろ使える良い特性だと思います。
敏感な人々は職場でより多くのストレスを感じているが、上司からは他の者より生産的だと評価されているという。ドイツのバンベルク大学人事管理学部のマイク・アンドレスンらは、HSPであることが、海外で働く従業員たちの「離職意向」にどう影響するかを調べた。その結果、HSPは重要な任務で海外に派遣されることが多い一方で、ストレスのせいで離職意向も高いことがわかった。
エレイン・アーロン著「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術 (フェニックスシリーズ)」
無料で誰でも簡単にセルフ診断テストを受ける方法
エレイン・アーロン博士の公式Webサイト上で、実は簡単に自分がHSPかどうかをチェックすることができます。
▶診断テスト(英語):https://hsperson.com/test/highly-sensitive-test/
▶お子さん向けの診断テスト:http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsc.html
25問の簡単な質問に答えるだけ。14以上あてはまる場合は「おそらくHSP」という割とざっくりしたもの。病気の診断として使うものではなく、「敏感さという特性」が自分にあてはまるか、だいたいの目安として知るのに有効だと思います。
14以上の質問に「はい」と答えたあなたは、おそらくHSPです。ただ、どのような心理テストも不正確な所があり、あくまでもあなた自身の生活に基づいて判断した方が良いでしょう。わたしたち心理学者は尺度を作る時、まず最初により良い質問にすることに力を傾け、その後、平均回答に基づいてカットオフ値を決定しています。
もし該当する質問の数がふたつかみっつしかなかったたとしても、それが非常によくあてはまるのであれば、あなたはHSPかもしれません。また、HSPの男女比に違いはありませんが、このテストを受けた場合、女性よりも男性の方が「当てはまる」と答える項目がわずかに少なくなることにもご留意ください。
http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsp.html
HSPの大半が遺伝による特性であることを考えると、その時の体調によって結果が大きく変わる診断テストなどは、あまり信憑性がない気がします。
また、「重度のHSP」などと、病気のように扱うものにも十分注意してください。
繰り返しになりますが、HSPはあくまで特性です。
HSPの方が「自分はHSPなんだ……」と自分を哀れむようでは逆効果だと思います。自分の特性を知って、人生を豊かにするためにも学びを活かしたいですね。
実際にHSPセルフテストをやってみた
実際に25問のセルフテストをやってみた結果、私は21/25でした。典型的なHSPですね。
ただ、「内気」という言葉はあまり合わないので、どちらかといえば外交的寄りのHSP(自分の感覚的としては「外交的なふりができる内向的なHSP」)かなと思います。好奇心旺盛だけど消耗しやすいという意味ではHSS(High Sensation Seeking:刺激探求型)のHSPなのかなと。
2年前に「【イラスト】「隠れコミュ障」の特徴」というイラストを作ったのですが、これもHSPの消耗しやすさゆえなのであれば納得です。
特に「暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている」はドンピシャすぎて驚きました。大人になってからあまり周囲に同じような人を見かけないので、自分の幼さと脳内お花畑なのが原因だと思いこんでいました。どうやらバイオレンスの刺激に消耗してしまうことが原因のようです。
HSPの大半が遺伝によると言われいるので、試しに両親にもやってもらいました。人の特性に関わるものなので、テストをやる前からなんとなく結果は分かっていましたが、
「父が16/25、母が4/25」ということで、うちの場合は父側からの遺伝だということもはっきりしました。
HSPはポジティブな可能性を含んだ特性
この特性があるかどうかは比較論だと思いますし、HSPに該当するからと言って自分を憐れむ必要も心配する必要もまったくありません。それより「自分の敏感さにどのように対処するか」「どうすれば自分に合う生き方ができるか」を考えることが大事だと思っています。
「敏感であること・感受性が高いこと」は悪いことではありません。むしろ、「内気」「恥ずかしがり屋」といった誤ったネガティブなラベルを自分に貼ってきた人にとっては、自分の良さに気付くいい機会になるのではないでしょうか。
RPG・ドラクエ風に言うと、HSPは「盾を装備していない魔法使い」に近いのかなと思っています。ダメージは受けやすいけど、その分他の人にはない良さがある。自分を守る盾を上手く作ってダメージを減らす努力をするか、きちんと休んでHPを回復させることが大事なのだなと。
今回紹介してきた部分は「敏感すぎる私の活かし方 高感度から才能を引き出す発想術」のほんの一部です。書籍ではこのほかにもたくさんの研究・リサーチに基づいたHSPの特徴や、よくある悩みへの対処法が紹介されています。中には「HSPが恋に落ちやすい理由」なんてチャプターもあります。
冒頭にも書きましたが、私自身この本のおかげで自分がHSPに該当することに気付き、ぐっと楽になりました。「自分がなぜ簡単にストレスを感じて消耗してしまうのか」への大きなヒントを得ることができ、仕事との向き合い方や休息のとり方を見つめ直す良い機会を得ました。
自分がHSPだと感じる方、身近にHSPがいる方、人のマネジメントをしている方などには特におすすめなので、ぜひ読んでみてくださいね。