【本まとめ】消耗状態から冴えた頭を取り戻す:クリエイティビティを高める「よい休息のとり方」

消耗する日々からのヒント

ブログを再開するまでの2年間、私は何度か大きな変化を経験しました。元々外資系企業で働いていたのですが、縁あってアメリカ・シアトルへの転勤が決まったこと。現地の生活や働き方にやっと落ち着いてきたかと思えば、今度はコロナウィルスで生活がまた一変。

シアトルでの生活はとても気に入っているのに、1日の終わりには疲れて何もできない日々が続きました。土日は大したことをしていないし、毎日平均6−7時間は寝ているはずなのに、頭は回らないし、疲れが取れない。頭が回らないから、仕事が進まない。

土日にブログを再開したくても、その元気が出ないし、良いアイデアもあんまり浮かんでこない。ちゃんと休んでるし、ある程度健康に良い生活もしてるのに、なんでまだエネルギー量が足りないんだろう。

寝てるのに。休んでるのに。

そんな「休息=寝る」という私の固定概念を変え、科学的に実証されている良い休息のとり方を教えてくれたのが、この洋書でした。


Rest: Why You Get More Done When You Work Less (English Edition)
Alex Soojung-Kim Pang (著)
Kindle 価格: ¥1,059
Audible版 価格: ¥0
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「Rest(休息)」をテーマにして、クリエイティビティを向上させる「良い休息」のとり方をまとめたビジネス本。

クリエイティブなお仕事をする方だけでなく、コロナ疲れを感じながらテレワークを続ける人が多い今の日本に、とても需要がある内容だと思います。ただ、良い本なのですが、日本語版がの翻訳文が、大学の教科書みたいというか……全体的に固くて、正直ちょっと読みづらいというのが難点です。

日本語で休息に関する本を読みたい方は、こちらのほうがおすすめ。今回紹介する本より、「脳の休め方」にフォーカスしている本です。


世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる
久賀谷 亮 (著)
Kindle版: ¥ 1,336 Audible版: ¥ 0
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というわけで洋書の方をベースにしつつ、「Rest: Why You Get More Done When You Work Less」のほんの一部ではありますが、特に面白いと感じた部分をまとめておこうと思います(以下翻訳部分は拙訳です)。

休息に関するよくある3つの誤解

休息=働かないこと?

First, work and rest are partners. Work and rest are not polar opposites. They complement and complete each other.

拙訳:まず、仕事と休息はパートナーだということ。対極にあるのではなく、互いを補完する関係にあるのです。

Rest: Why You Get More Done When You Work Less (English Edition)

私たちは、ついつい「どう働くか」に目がいきがち。世の中で成功を収めるビジネスパーソンやアスリートが「どのように休んでいるか」に着目することって、ほとんどないですよね。無意識のうちに私たちは「働いている時間と、それ以外」という対になるような切り分けをしがち。

この本では、「優れた仕事をするうえで休息は欠かせない」存在で、かつクリエイティビティを向上させるために必要なものだと言います。

休息=身体を休ませること?

Second, rest is active. When we think of rest, we usually think of passive activities: a nap, lying in the couch, watching sports on television, or binge-watching a popular TV series. That’s one form of rest. But physical activity is more restful than we expect, and mental rest is more active than we realize.

拙訳:次に、休息はアクティブな活動だということ。「休息」と聞いて私たちが思い浮かべるのは、昼寝、ソファに横になること、テレビでスポーツ番組を見る、テレビの人気シリーズを一気に見る、といったことではないでしょうか。それらも休息のひとつではあります。しかし、たとえば身体を動かすことも、予想以上に休息としての効果がありますし、精神面を休めることは、私たちが思う以上にアクティブな活動なのです。

Rest: Why You Get More Done When You Work Less (English Edition)

この本を読むまで、私は正直「休息=寝るかリラックスすること」だと思っていました。特に運動を「休息方法のひとつ」として考えたことなどありませんでした。言われてみれば運動はストレスを和らげ、メンタル面でも良い影響を与えてくれますよね。

精神を休める動きであれば、たとえば瞑想が良い例。呼吸に集中するのって案外難しいし、能動的に意識してやらなければすぐに他のことを考えはじめてしまいますよね。

睡眠だって実はアクティブ。私たちが無意識な中でも、脳は休んでいません。その日を振り返って、記憶を定着させ、身体が寝ている間にも私たちが取り組んでいる問題を熟考しているのです。

休息はみんなやってるし、誰でもうまくできる?

Third, rest is a skill. Rest turns out to be like sex or singing or running. Everyone basically knows how to do it, but with a little work and understanding, you can learn to do it a lot better. You can enjoy rest more profoundly and be more refreshed and restored.

拙訳:3つ目、休息はスキルだということ。休息は、セックス、歌うこと、ランニングのようなもの。基本的なやり方は誰でも知っていますが、少し勉強して理解することで、もっと上手くできるようになるのです。あなたは休息をもっと深く楽しむことができるし、もっとリフレッシュして、もっとエネルギーを回復することができます。

Rest: Why You Get More Done When You Work Less (English Edition)

この部分は正直目からウロコでした。世界に通用するパフォーマーは、よい休息のとり方を戦略的に学んでいるそうです。

そして、この「戦略的休息」は、クリエイティビティを刺激し、維持する効果もあるというのです。

休息でクリエイティビティを向上させる方法

この本においては「休息=休むこと」ではなく、運動その他アクティブな活動も休息に含まれる、という概念の部分は伝わったかなと思います。

よい休息を取り、クリエイティビティを刺激するために大切なこととして本で紹介されているのは下記。詳細は本を読んでいただければと思いますが、おそらく多くの方が「大事なのは知っているけど、できていない」ことではないでしょうか。

  1. 4時間のハードワーク:1日のうち4時間だけ(特に朝)、時々休憩をはさみつつ集中して仕事をする時間を取る。この本の英語タイトルは「Rest: Why You Get More Done When You Work Less(休息:なぜ短く働いた方が多くをやり遂げるのか)」です。会社で働く人にとって4時間だけ働くというのは現実的ではないかと思いますが、1日の中で特に集中する時間を意識して取るのは大事だと思います。
  2. 朝のルーティーン:朝のルーティーンを作り実践することは、実はクリエイティビティを刺激する。ルーティーンってむしろクリエイティブとは無縁な気がしてしまいますが、実はルーティーンはクリエイティビティを向上させる効果もあるのだとか。
  3. 散歩:散歩は1日のルーティーンの中でも大事。運動源にも、ひとりの時間を確保するのにも良い方法です。
  4. 仮眠・昼寝:20分程度の短い仮眠は、枯渇したエネルギーを回復させ、その後ふたたび集中できるようになります。1日だけではなく、日常的に仮眠を取ると、記憶力も上がるほか、メンタル面でスッキリすることもできます。
  5. 中断する:直感的には理解しづらいのがこれ。仕事が順調に進んでいる時に、まだエネルギーが残っている時に、あえて意図的に手を止めること。「次に何をやればよいか分かっているタイミング」で、次の日に回すこと。長期的に生産性を保つ上で効果的な休息方法なのだそうです。
  6. 睡眠:これが「休息」として最もイメージしやすいかと思いますが、睡眠は身体のエネルギー回復にも、睡眠中働いている脳にも不可欠。睡眠不足は身体にも悪影響を及ぼすほか、反射能力、意思決定、学習能力を損なう原因になり、新しいアイデアを生むのを阻害してしまいます。睡眠をどう取るかに関しては、下記の2冊がおすすめ。


スタンフォード式 最高の睡眠
西野 精治 (著)
Kindle版: ¥ 1,336 Audible版: ¥ 0
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まんがでわかる! 元気が出る睡眠
まんがでわかる! 元気が出る睡眠
カミムラ 晋作, 鍛治 恵
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
Kindle Unlimited ¥ 0 

 

休息でクリエイティビティを維持する方法

クリエイティビティを維持するうえで大切な「休息」には、下記が挙げられています。特に、回復(リカバリー)とディーププレイがとても面白かったです。

  1. 回復(リカバリー):私たちの日々の疲れからの回復には4つの要素があるそうです。この4つは協働してエネルギーの回復をもたらします(3の「やりがいがあって夢中になれる活動」が、4の「心理的に仕事から離れること」の助けになるなど)。私にとってブログを書くことは、3と4に役立っています。
    1. リラクゼーション:私たちが最もイメージしやすい回復方法。楽しく、努力を必要としない活動。
    2. コントロール:時間とエネルギーと注意力と何に使うか、自分で決められる(自分にコントロールがあること)。仕事で起こること、家庭に起こることにコントロールがない人ほど消耗し、より休息が必要となる。
    3. 達成経験(Mastery Experience):「フロー体験(関連するTED動画に飛びます)」を引き起こすような経験。やりがいのある何か(例えばチェスやピアノ)を上手くできた時に感じる幸福感・満足感も回復の要因になり得るそうです。
    4. 心理的に仕事から離れること:バケーションだけでなく、平日の夜や週末の休息においても大事な要素。ストレスの向上や燃え尽き(バーンアウト)を防ぐためにも大事。例えば、バケーションにPCを持ち込み職場と連絡を取っていると、せっかくの休息の機会にも関わらず回復を妨げてしまいます。
  2. 運動:運動も、クリエイティビティに良い効果があります。特にランニングは神経発生に効果が高いそう。私たちの仕事は、私たちが思っている以上に「認知を要する肉体労働」であり、身体的なスタミナは仕事にも影響するのだとか。定期的な運動はストレスを和らげ、難しい仕事によるプレッシャーに対処する能力を高めます。
  3. ディーププレイ:浅い遊びでは得られない、長く続く恩恵と満足を提供する「遊び」。下記の特徴のうち、少なくともひとつに当てはまるとディーププレイと言えるそうです。私にとっては、これもブログを書くことだったり、あとは子どもの頃に大好きだったドラクエをプレイすることが当てはまる気がします。
    1. 夢中になれるもの。仕事では得られないような新しいことを学んだり、自分に関する新たな発見につながるようなもの。
    2. 仕事で使っているスキルを、別の状況で楽しく活用できる機会。
    3. 仕事と同じような満足をもたらし、かつ仕事では得られない恩恵が得られるもの。たとえばアプリ開発を仕事にしている人が音楽の演奏を練習するなど。
    4. プレーヤーと過去をつなげるもの。子ども時代や若い頃を思い出させる個人的なつながりを築くもの。
  4. サバティカル(長期休暇):日常生活から離れる休暇を取ること。新しいアイデアを生み出すことにも効果的。長期と言っても、必ずしも長期である必要はない。ビル・ゲイツも毎年、「思考週間」といって1週間仕事や日常から離れる期間を取ることで、新たなアイデアを生み出してきたのだそう。

良い休息はクリエイティビティを高め、エネルギーを回復させる

良い仕事は、良い休息から。単に身体を休めるだけが休息だけではない。

以上、長くなりましたが、洋書「Rest: Why You Get More Done When You Work Less」の本要点まとめでした。


Rest: Why You Get More Done When You Work Less (English Edition)
Alex Soojung-Kim Pang (著)
Kindle 価格: ¥1,059
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この本を読んだ1ヶ月ほど後に、こうしてブログを再開させるまでエネルギーを回復させることができました。また散歩をしている時など、今までよりアイデアがひらめく機会が増えた気がします。

そして、ブログを書くこと自体が実は私にとっての回復手段であり、ディーププレイであることも気付くことができました。

こちらの本ではあまり突っ込んだ話は出てきませんでしたが、「脳の休息」については「世界のエリートがやっている 最高の休息法」という本の大きなテーマでもあります。今回は洋書のご紹介でしたが、「日本語で休息に関する本を読んでみたい」という方は、こちらもぜひ読んでみてくださいね。


世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる
久賀谷 亮 (著)
Kindle版: ¥ 1,336 Audible版: ¥ 0
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