激務の人でも「めちゃくちゃ忙しい」と言わなくなるTEDトーク:緊急救命室(ER)ドクターの優先順位付け

「Crazy busy:めちゃくちゃ忙しい」と言わないERのお医者さん

このTEDトーク、仕事が忙しい時にパニックになりがちな人ほど、どこかで時間を取って観てみてほしい。すごく面白いです。

緊急救命室(ER) のお医者さんが語る、優先順位付けのお話。

普通の人なら「おかしくなりそう」と言いそうな忙しさにも動じず、「ERにどんな患者が入ってきても対応可能なはず」という姿勢で臨むERのドクターたち。

いわゆるパニック状態の「Crazyモード」ではなく、どうやってその準備万端状態「Readyモード」を作り出しているかのお話をしています。

以下、簡単に主な学びと感想をまとめました。

なぜ激務の中でも「めちゃくちゃ忙しい」と言わないのか

命に関わる症状を持つ患者さんを含めた多数の患者さんを日々診察するハイプレッシャーなお仕事にも関わらず、スピーカーのDarria Longさんの口から「Crazy busy(めちゃくちゃ忙しい)」という言葉を聞くことはないそうです。

彼女がそう言わない理由がこれ。

Here’s why you cannot afford to use “crazy” to describe your busy. Because when we are in what I refer to as Crazy Busy Mode, we are simply less capable of handling the busy. Here’s what happens. Your stress hormones rise and stay there, your executive function in the prefrontal cortex declines. That means your memory, your judgment, your impulse control deteriorate, and the brain areas for anger and anxiety are activated.

なぜ忙しさに”めちゃくちゃ(Crazy)”を付けてはいけないかというと、”Crazy Busyモード” の状態になると、単純に忙しさへの対応力が下がってしまうからです。ストレスホルモンが上昇したままになり、前頭前皮質の実行機能が低下します。その結果、記憶力や判断力、衝動を制御する機能が弱まり、怒りと不安に関わる脳の領域が活性化します。

https://www.ted.com/talks/darria_long_an_er_doctor_on_triaging_your_crazy_busy_life/

彼女は、「めちゃくちゃ忙しいと感じることなく、救急部門のような忙しさに対応することはできる」と続けます。

ERドクターの優先順位付け:Ready(準備万端)モードの作り方

ステップ1:徹底的なトリアージ

トリアージとは、緊急度合いによって優先順位をつけること

研究によると、脅威と脅威ではないことの区別をつけられず、あらゆることに同じ対応を してしまう人はストレスホルモンが2倍になることが分かっているそうです。

全てに一度に対応するのではなく、トリアージして緊急度の高いものから手を付けて行きます。私たちの仕事でのタスク管理と同じ発想ですね。

まず、患者の容態に応じて下記の4つのカラーに色分けします。

  • 赤:Life-threatening(命に関わる)
  • 黄:Serious(重症)
  • 緑:Minor(大したことない)
  • 黒:Nothing we can do(手遅れで手のほどこしようがない)

色分けしたら、赤・黄色・緑の順で対応していきますが、下記の注意点があります。

そしてこの注意点がとても大事だと感じました。

  1. 何が「赤」かを知り、ノイズに惑わされないこと。特に、ノイズが大きな黄色や緑に惑わされない(Know your reds, and do not let your non-reds distract you from them)。
  2. 「緑」に関しては、完璧な処置をしなくて良い(It’s okay if it’s not perfect)。誰も死なないから。
  3. 「黒」に関しては、心が痛んでも切り離す必要がある。すべてをやろうとすると「赤」を救えなくなるから(If you try to do everything, you have no hope of saving your reds)。

このTEDトークを初めて観た時、私はまっ先にこう思いました。

 
みつは
私、めっちゃノイジーグリーン(うるさいだけの緑タスク)に振り回されてる……!

それ以来、ノイジーグリーンが来ても優先順位を変えないようにしつつ、対応するまでに時間をもらうことに了承を取るようにしました。冷静に対応することができればストレスも大きくなりません。

特に意識してノイジーグリーンとして処理しているのは、「私にとっても、ビジネス・お客様にとっても緊急じゃないのに、この人(同僚)が緊急に対応させようとしている」ケース。「これお願い!明日までによろしく!」というやつですね。

なぜ緊急に対応する必要があるのかを聞きつつ、無茶なタイムラインはプッシュバック。どうしても対応する必要が出てしまった場合には、チームなので一応助けますが、次回以降は時間に余裕を持って依頼してくれないと対応できない旨をきっちり伝えます。

そして、緑に関しては「完璧な処置をしなくて良い(It’s okay if it’s not perfect)」という点もすごく刺さりました。

ステップ2:「めちゃくちゃ忙しい」ことを想定し、備えること

ステップ1でトリアージをしたら、タスクが簡単になるように準備をします。

選択肢が多いほど決断に時間がかかり、決断することが多いほど脳は疲れやすくなります。

日々の選択肢を減らし、決断を減らすことで、目の前の仕事に集中しやすくしましょう。

私たちの生活の例として挙げられていたのは、「週末に次の一週間の献立をあらかじめ計画しておくこと」。平日の仕事を処理する中で、「今日の晩ごはんは何にしようかな」と、脳を働かせずにすみますよね。

また、自動化できることや、リストに書き出せることを記憶しようとしないこと。確かに日々のTo Doリストを1日のはじめに書き出しておくだけでも、「今日あと何やるんだっけ」とならずに済みますよね。

ステップ3:考えすぎないこと

たとえば、自分にうまくできるか分からない難しいタスクが回ってきた時。躊躇する気持ちが芽生えたり、「本当に自分にできるだろうか」と不安が生じて緊張してしまいませんか?

スピーカーのDarria Longさんが例として出したのは、女性が陣痛でやってきた時、赤ちゃんの首にへその緒が二重に絡んでしまっていることが分かった時のこと。

誰でも不安や緊張が生じることはありますが、重要なのは「その後にどう行動するか」。くよくよ考え始め視野が狭くなった状態では、いわゆる「Crazy busyモード」と一緒で、問題を解決することはできません。

こういう状況に出くわした時に彼女が意識しているのは、「相手に心を向ける」こと。

To deliberately make myself see the person in front of me, see myself in the arena with them — what do they need, what do they fear and how can I help? This may sound like a whole lot of warm and fuzzy to you, but it’s not. In fact, research shows that when you prime your brain with what is, essentially, compassion, we disrupt that tunnel vision and internal monologue.

目の前にいる人に意識して目を向けます。相手が何を必要とし、何を恐れ、自分に何ができるかを考えます。よくある感情論に聞こえるかもしれませんが、それは違います。研究によると、脳が思いやりベースの思考になると、視野が狭くなることや考えすぎに陥ることを防げるのです。

https://www.ted.com/talks/darria_long_an_er_doctor_on_triaging_your_crazy_busy_life/

Readyモードで仕事に挑む

「ああ、今日もめちゃくちゃ忙しい」という気持ちで仕事に臨むのと、「うん、今日も忙しいだろうけど準備は出来てる」という気持ちで仕事に臨むのと。

どちらの方が仕事に上手く対応できそうか、言うまでもないですよね。

ユーモアたっぷりにお話をされるので、ぜひ実際のTEDトークも見てみてください。

タスク管理や優先順位付けに関しては、こちらもよかったら。

【4コマ+雑記】頑張ってるのにタスクが爆発してしまう

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元花王社員の方で、残業100時間から「12時出社・5時退社」を実現した優先順位付けのノウハウをまとめています。



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