この前、タスク管理について考え事をしていたときに、ふとこんなことを思いました。
タスク管理について考えてたけど、ふと「マルチタスクって聖徳太子みたいで、シングルタスクってわんこそばみたいだな」って思った。
凡人の私は、わんこそば一択。#マルチタスク pic.twitter.com/AujropXAnW
— みつは@シアトル (@mitsuha_dayo) October 20, 2020
10人の話を同時に聞き、的確に理解することができたという、聖徳太子。
目の前のそばにひとつひとつ集中する、わんこそば。
友人と話している時、スマホから気になるニュースが目に入っただけで、一気に友人との会話が一気におろそかになってしまう私からすると、聖徳太子のやっていることは明らかに無理だと感じたのです。
10人どころか、2人も無理。
自分には、やはりマルチタスクは向いていないな、なんて考えていた時。
「向いてない」どころか、マルチタスクは不可能だということを教えてくれたのがこの本でした。
SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる
デボラ・ザック (著)
Kindle版: ¥1,336
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「マルチタスク」が効率悪いどころか、不可能な理由
まずは、この2人の方の発言を読んでみてください。
スタンフォード大学の神経科学者エヤル・オフィル博士は「人間はじつのところマルチタスクなどしていない。タスク・スイッチング(タスクの切り替え) をしているだけだ。タスクからタスクへとすばやく切り替えているだけである」と、説明している。
マサチューセッツ工科大学のアール・ミラー博士はこう述べている。「なにかをしているときに、べつのこと(タスク) に集中することはできない。なぜなら2つのタスクのあいだで『干渉』が生じるからだ。人にはマルチタスクをこなすことなどできない。『できる』という人がいるとしたら、それはたんなる勘違いだ。脳は勘違いするのが得意である」
人間の脳は、一度に2つ以上のことに集中できない。マルチタスクは不可能。
私たちが「マルチタスク」だと思っていることは、実は「タスク・スイッチング」。
そしてこの、ひとつのタスクを終えることなく他のタスクへと切り替える「タスク・スイッチング」が、私たちの生産性を大きく下げているというのです。
ただ、こんな反論もできますよね。
実は、効率を下げずに「同時にできる」タスクも、一応存在します。
ミシガン大学のデヴィット・マイヤー博士は、次のように明言している。「たいがい、脳は複雑な2つのタスクを同時に処理することはできない。ただ、その2つのタスクが脳の同じ部位を使わない場合は例外となる。」
意識的な努力を必要としない活動に関しては、メインの作業と同時に行うことができて、不利益がないそうです。
逆に言うと、複数の複雑な作業を同時に行おうとすると、脳の中で同じ部位(前頭前野)の取り合いが起こるのだとか。
たとえば運転。既に何年も運転をしている人は、難なくラジオを聴きながら運転できますが、免許を取ったばかりの人はその余裕がないですよね。
こうやって脳の仕組みを知ると、やっぱり聖徳太子の逸話はあまり現実味がないですね……。
マルチタスク(タスク・スイッチング)のデメリット
こんな経験、ありませんか?
集中力を要する複数の作業を同時に行おうとする、「マルチタスク(タスク・スイッチング)」。
人間の脳に向いていないマルチタスクを行おうとすると、こんなデメリットがあるのだそうです。
- 注意力散漫:「一度に複数の作業をしようとする」こと自体が「気が散っている」ことを意味する。そしてこの気が散っている状態が、2〜5のデメリットを更に引き起こす。
- 集中力の低下:タスクのスイッチを行うと、集中する対象を切り替えるよう脳が強要される。すると遅れが生じ、切り替えの度に集中力が落ちる。集中力が落ちると、自分の頭の中の思考(ほかのことを考える)や、外部からの刺激に影響され、更に能率を落としやすい。
- 状況の変化に適応する柔軟性の低下:1つの知識をべつの状況にあてはめて使う「知識の転移」の能力が落ちる。
- 学習能力・記憶力・理解力の低下:情報を記号化しにくくなり、記憶力が低下。脳が情報を効率よく処理し、保管することができなくなる。きちんと物事を把握することができないため学習能力や理解力も低下。
- 対人関係や生活の質への悪影響
5の人間関係に関しては、「そんな大げさな」と思うかもしれませんが、こんな経験ありませんか?(私はあります)
一回ならまだ大丈夫かと思いますが、こういうことを日常的に繰り返していると「自分はないがしろにされている」と相手が感じるのも無理はないですよね。
マルチタスクとは、絶え間なく気が散っている状態を意味する。
シングルタスクのメリット
シングルタスクとは、「いまここにいること」「一度にひとつの作業に没頭すること」を意味します。
シングルタスクを行うことで生まれるメリットには、たとえば下記のようなものがあります。詳細はぜひ本を読んでみてください。
- シングルタスクに専心することで、「ゾーン」に入ることができ、鋭い集中力を一定期間維持できる。
- シングルタスクはエネルギーと集中力を生み出す。高い生産性・充実感・確実な成果を得られる。
1つの作業に没頭すると「フロー(チャレンジとスキルが釣り合う状況でものごとに没入する体験)」の状態が生まれ、ふだんよりずっと高い能力を発揮できるようになる。マルチタスクをすると、「フロー体験」をできる可能性はゼロになる。
フロー体験に関しては、こちらの本で提唱されているものです。私は5年くらい前に友人に勧められて読み、当時目からウロコだったのを覚えています。
フロー体験入門―楽しみと創造の心理学
M.チクセントミハイ (著)
単行本: ¥2,530
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シングルタスクの生産性を上げるコツ
効率よくシングルタスクを行うには、「いまという瞬間、ほかの要求にいっさい応じることなく、1つの作業だけに取り組むこと」が求められます。
次のタスクに取り掛かるのは、今やっている作業を終えてから。
本ではたくさんのコツが紹介されているのですが、実践しやすいものをいくつか簡単に紹介します。
- 外部からの刺激を減らす。スマホの設定をミュートにしたうえで、SNSやアラートなど通知機能をOFFにする。ミーティング中はスマホをどこかにしまって目の届かない場所に置く。デスクは片付けておく。
- アイデアがひらめいたり、重要なことを思い出した時、今の作業と無関係なら、一旦メモに書き留める。そしてすぐに本来の作業に戻る。
- かならずしも「1回でタスクを全部完了させる」必要がある訳ではない。たとえば時間がかかるタスクに関しては、「○時までは、この作業に専念する」と決めて、集中する。
- 閲覧したWebサイトは、必ず閉じる。
- メールは1日3回、20分ずつ時間を取り、それ以外の時間はチェックしない。
- 電話や打ち合わせの際、間延びすることを避けるため、先に「制限時間」を伝えておく。
- 午前中を有効に使う。仕事を始める時、「午前中に片付けるべき仕事のリスト」に5分目を通し、不要な項目を消して重要なものを割り出す。
- 類似タスクはまとめて片付ける。
「類似タスクをまとめて片付ける」ことに関しては、こちらの記事でも少し触れています。
【4コマ+雑記】頑張ってるのにタスクが爆発してしまう
「SINGLE TASK 一点集中術」では、その他にも「1x10x1のルール」「空白タイム」「ラリーを減らす」など、まだまだ「一点集中」の状態を作り出すのに有用なコツたくさんが紹介されているので、残りはぜひ本を読んでみてくださいね。
さくっと読めて、学びも多いのでおすすめ。
SINGLE TASK 一点集中術――「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる
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