前提として、この投稿はこんな方に向けて書いています。
- 何かを頼まれると、内心嫌でも断るのが苦手な方
- 悪い意味で忖度(そんたく:相手の気持ちを推し量ること)してしまう方
- 周囲の自己主張や意見が強い人に振り回されがちな方
- HSP(繊細さん)で、特性を活かしつつも処世術を身に付けたいという方
アサーティブネスとは
「アサーティブ・コミュニケーション」「アサーティブネス」と言った言葉を聞いたことはありますか?
「アサーティブネス(Assertiveness)」は、相手にも配慮した自己表現や自己主張を意味します。
職場ではもちろん、友人・家族など身近な人間関係でも、あらゆる対人関係において役に立つスキルです。
アサーティブネスの定義や、アサーティブ・コミュニケーションの活用方法などは、こちらのStudy Hackerの記事がとても詳しくまとめてくれていました。
このブログでは、アサーティブ・コミュニケーションの要点をまとめつつ、上記のような人がどうやって「自分らしさを保ちつつ、我慢せずに自己主張」できるのかについて書いてみようと思います。
アサーティブではないコミュニケーションについて
アサーティブではないコミュニケーションは、「攻撃的タイプ」「受身的タイプ」「作為的タイプ」の大きく3つに分かれます。
この投稿を読んでいる方の多くは、受身的タイプに当てはまるのではないでしょうか。
そして、攻撃的タイプや作為的タイプの人とのコミュニケーションに苦戦しているのではないでしょうか。
攻撃的タイプ
攻撃的タイプは、自分の意見を主張することに重きを置いており、相手を尊重することができていません。人との関係を勝ち負けで考えており、「負けたくない」「間違いを指摘されたくない」という自己防衛心理が働いている状態とも言えます。自分の意見をはっきりと言うことはできますが、相手に「ノー」と言わせません。また、過剰な自己主張によって相手を傷つけていることも大いにあります。
受身的タイプ
受身的タイプは、関係悪化を恐れるあまりに相手の意見に合わせてしまい、自分の意見を主張できません。表面的には相手を思いやる優しい人だと思われがちですが、根源にあるのは、「自分が嫌われたくない」という自己中心的な心理です。遠回しな表現や自信のない態度によって周りをいらだたせていることもあります。
作為的タイプ
作為的タイプは、言葉にして主張しない代わりに態度や雰囲気で感情を表したり、第三者を介したりして主張するタイプです。何か主張したいことや不満があっても言葉にはせず、かといって受身的タイプのように黙っているのは我慢ならないので、どうにか相手に察してもらおうとします。正面から人と対立することはありませんが、心の中では相手を見下している場合が多いのが作為的タイプです。
受身的タイプの方、黄色でハイライトしたところ、けっこうグサッと来ませんか?
ただ、内心嫌なものを無理に引き受けてもストレスが溜まるだけ。
最悪なケースでは「無茶振りに応えたのに感謝もされず、同じような無茶振りが更に飛んでくるようになった」なんてことも。
アサーティブな会話の特徴
私の上司(アメリカ人)はアサーティブな会話がとても上手な人です。
以前仕事で、こんなことがありました。
ただ、申し訳ないのだけど、依頼されたタスクを明日までにやるのは難しいです。
理由は、1) 事前に連絡がなかったこと、2) 私たちのチーム内では他にもプライオリティの高いタスクがあること、そして 3) このタスクを完了するにはこのくらい時間がかかるから。
明日までというのは本当に動かせないタイムラインですか?本来は1週間前までに連絡がほしいですが、3日バッファーをくれるなら、今回は特別に対応します。
今後また同じような話が出た場合には、1週間以上余裕を持って、このプロセスに従ってリクエストしてください。
ローンチが上手く行くことを願っています。
対応してくれて本当にありがとう。
気さくかつ思いやりに溢れた方なのですが、無茶な要求にはきっぱりプッシュバック。
断る理由は明確だけど、表現は柔らかい。断られた側も気分を害さない。
こちらの要求は伝えるけれど、相手にも手を差し伸べる提案もする。
下記の3つのポイントを綺麗に押さえている会話でした。
1. 率直かつ柔らかい表現で伝える
自分の意見を伝えることが苦手な人や、反対に自分の意見ばかりを主張してしまう人が自己主張をする際には、率直かつ柔らかい表現で、相手の目をしっかりと見ながら伝えるよう意識することが重要です。
2. 3つの要素を整理してから伝える
相手に伝えたいことがある場合には、「起きていること(事実)」「感じたこと(感情)」「してほしいこと(要求)」の3つの要素を紙などに書き出し、頭の中を整理してから伝えることがおすすめです。こうすることで、自身を一度クールダウンさせて必要なことだけを述べられるので、不必要に感情的になって相手を威圧することなく、意見を主張できます。
3. 代替案を提示して断る
相手の要望を断る際には「事実」「感情」「要求」を整理して伝えたうえで、代替案を提示しましょう。代替案を提示することによって、要望を断られたほうにも誠実な印象を与えることができます。
上司の例は職場での会話ですが、これってあらゆる対人関係において使えるやり方ですよね。
アサーティブコミュニケーションを実践してみて思うこと
ちょっと横道に逸れますが、私が「アサーティブネス」が自分の課題であることを知ったのは1年くらい前。
「EQ(Emotional Intelligence:心の知能指数)テスト」を受けたことがきっかけでした。
有料かつ日本語版がないのですが(たしか10ドルくらい)こんな感じで、多くのEQに関連する項目をスコア化してくれます。
多くの項目は80点以上で、低いものでも50~60点台。
だったのですが、アサーティブネスだけ、驚異の28点を叩き出しました。
改善点のコメントにも、こんな記載がありました。
You rarely, if ever, display assertive behavior. You have difficulty saying no, standing up for yourself, or commanding respect from others.
あなたは、アサーティブな行動をすることがほとんどありません。あったとしても、きわめて稀。あなたは「No」と言うことが苦手で、自分を守るために主張をすることや、周囲から敬意を得るような行動をすることにも苦手意識があります。
断るのが苦手で、かつ役に立ちたいとも思うから、内心ためらいつつも引き受けてしまう。
ただ、そうすることで、かなり消耗してしまっているのも事実。
それ以来、自分で自分の首を締めてしまうことを減らすよう、特に意識してきたのがこのアサーティブネスです。
実践してみて思うのは、案外難しくないということ。
それ以上に実感したのは、恐れていた「人間関係の悪化」は全く起こらなかったこと。
ひとりのHSPとして勇気が要る部分は、相手への気遣いと同じくらいのレベルで、自分の気持ちを出すことでした。
職場では「ロジカルにかつ柔らかく」、パーソナルな場面では「何か困っている友人をかばうような気持ちで、自分の気持ちを表現する」といった意識を持つと、言葉自体は出てくるようになったと思います。
こちらの記事にあるように、期待値をあらかじめ設定するのもすごく効果的だと思います。
アサーティブな会話としての正解は、「今日はこの後予定があるため○時になったら切り上げさせてください」と会議の前に伝えておき、予定時間になったら率直に「そろそろ○時になりますので、ここで終わりにさせていただきます」と伝えることです。
「忖度して我慢」と「優しさ」は別物
HSPの方の中には「相手の気分を害することが大きなストレスになる。なら自分が我慢した方がまだマシ」という方もいるのではないでしょうか。
ただ、アサーティブなコミュニケーションが得意な人を見ている中で、「優しさ」と「忖度して我慢すること」は全くの別物だということにも徐々に気付きました。
アサーティブネスは、優しくありつつ、しっかり自己防衛するためのスキル。
何でも引き受けて潰れてしまうことなく、相手の気分を害することもなく。
自己主張は必ずしも悪いものではありません。
自己主張という言葉が強く感じる方は、相手にも自分を理解してもらうための自己表現だと思えば少しハードルが下がるかもしれませんね。
相手への気遣いを残したままで、自分もしっかり守るアサーティブなコミュニケーション。
同じような課題をお持ちの方の役に立てれば幸いです。